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JDM News.net   代表  流通ジャーナリスト 塩田信夫

【第47回】「お金を返せ」とは言わず、回収する督促マンのワザとは

2012年12月25日|トラックバック(0)

POINT

『督促のためのコールセンター』
『債務者のモラルと債権者の責任』
『質問形式にすることで、相手に考えさせる』
『聞き役に徹し、コミュニケーションをとる』

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■督促のためのコールセンター
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コールセンターの役割が注目されて久しいが、
今回はあまり知られていない職場を紹介してみたい。

督促のためのコールセンター、債権回収の現場である。
「サービサー」と言われる業種であり、法務省が所管である。
金融機関の関連会社が多く、約100社程あるそうだ。

中長期に渡って返済を滞納しているお客へ督促をし、債権を回収する
専門の会社である。ショッピングやカード、自動車や不動産など
各種ローンの支払いが滞ってしまい、すでに数年どころか4、5年も
経過しているような債権を専門に扱う会社である。

通常はそれぞれ金融機関の部署や担当者が回収し、時間が経過すると
管理部門が引き継ぐ。それからまた1、2年経過した債権が専門会社へ
移管されるのだ。そうした債権は買い取られたり、受託であったり
まちまちである。

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■債務者のモラルと債権者の責任
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5年も経っていれば時効なのではと思われるかもしれない。
確かに商業契約の場合の時効は5年である。「時効の援用」と言われるもので、
債務者から書面で申し入れがあって債権者がこれを認めれば時効となる。
ここがポイントである。債務者がいくら時効と思い、無視したままでは請求は止まない。
いや請求すること自体法律違反ではない。また、訴訟を起こされ「債務名義」の
判決があれば、時効は10年である。「債務名義」とは「あなたに債務があることは
裁判所でも認めました。返済の義務があります」という判決が出たこととと同じなのである。
強制執行で勤務先がわかれば、「給与の差し押さえ」ということにもなりかねない。

突然、債権回収会社からの督促である。びっくりするのは当たり前だ。
債務者といっても一般の借り手である。多重債務者の場合も多いが、
中には本当に忘れていたお客もいる。銀行やカード会社からの督促の書面が
送られてこないのでそのままにしていたら、1年も2年も経ってから督促状が送られてくる。

「なんで今頃」と思ってみても仕方がない。借りたまま返していない本人の
責任でもある。最近巷で言われる振り込み詐欺ではと、警察や消費者相談窓口に
相談される中高年者の契約者も多いらしい。書面に限らず電話での督促業務が一般的だ。
債権会社と名乗って、債権者への督促である。この手の仕事は若い社員、
特に若い社員は不向きかもしれない。

債務者に「借金が残っているので返してください」と言うのである。
まさか、真正直にこんな言い方はしないだろうが、中にはいるそうである。
「払えるなら、とっくに払っているよ」「急に電話で金返せだ、誰だおまえは」
「あんたの会社に金は借りていないよ」電話で怒鳴られたり、怪しまれたり...と、
大変な職場でもある。

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■質問形式にすることで、相手に考えさせる
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債務者へ督促の電話、どうすれば回収ができるのか、この仕事はただ真正面から
こちらの理屈で攻めても結果は出ないのだ。ストレートな物言いは、
相手のプライドを傷つけてしまうばかり。借りたまま返さない方が悪いのは
決まっているが、そこを突けば痛いところを突かれたとばかり、怒り出したり
揚げ足を取ってきたりするのだ。こちらの要求を押し付けても、
相手の怒りや反発を買うだけである。

ではどうするのか、一つ言えるのは、こちらの立場を説明できたらなるべく
質問形式で話を進め、こちらへの回答を考えてもらうことだ。
「借りたものは返してください」ではなく「いろいろ事情はおありでしょうが、
ご入金いただけるのは何日頃になりますか」、日にちが決まれば、
なぜその日が都合がいいのか、給料日と回答があれば支給額を聞けばいい、
返済計画の相談に乗っているという関係ができれば、家族構成や仕事先についても
聴取できる。家族や仕事先を知られると不履行率は断然下がるのだ。

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■聞き役に徹し、コミュニケーションをとる
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「お金を返せ」や「借りたものは返せ」的な督促は怒りを誘うだけである。
債務者の多くはいつか返さなければならないことは承知しているのだ。
遅延するのは悪いことも承知している、本当に生活困窮者でわずかな返済も
難しいという債務者もいるのだ。それもコミュニケーションが取れなければ
判断することはできない

お客との応対でよくあるクレームの一つに「上から目線の物言いが気に入らない」
というものがある。そんなつもりはなくても、客側からすれば言われることが
もっともであるだけに、ちょっとした態度や言い方が気に入らなくなるのである。
理不順な場合もあるが、「担当者を変えろ」「上司に代われ」と、一方的に怒り出す。
そんなときは応対者が変わるだけでもずいぶん違うものだ。最初は聞き役に徹することだ。
謝る際には、何が原因でお客が怒っているのか、その理由をできるだけ具体的に
言葉にしてお詫びすること。たいがいはそれで解決してしまう場合が多いという。

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■督促という名の人生相談
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見方を変えれば様々な人生を垣間見えてしまう職場である。
債務という重荷を背負ってしまった個人の相談相手になることでもある。
真摯に対応しなければならない立場にある。ある担当者から聞いた話だ。
娘あての督促状が届き、弁済を申し入れてきた母親が突然泣き出したという。
当の娘が癌で急死したという。入院のため職を離れ、返済が困難となったらしいのだ。
返済が遅れた理由が娘の突然の死とあれば、こんな悲しいことはない。
切々と娘さんの病状を説明する電話が続いたが、切るに切れず、話を聞いていた
という。金融の専門的知識と法的根拠をもとに詰めていくというだけでは、
中長期の債権の回収は難しい。ある意味では人生相談の窓口的役割も必要であるようだ。

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