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JDM News.net   代表  流通ジャーナリスト 塩田信夫

【第13回】架電督促の現場で見たコミュニケーション技術とは

2009年09月28日|トラックバック(0)

POINT

『お客のカウンセリングから始まる仕事』
『督促状を受け取って連絡する債務者の心理とは』

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■お客のカウンセリングから始まる仕事
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 10本の電話を受ければ、10の物語を聞かされる。債務者それぞれの事情と理由があるのだ。一見同じように聞こえる不履行のわけ、理由はとことん聞いて見なければ、債務者の本音は分からない。当然、返済・回収への道は開かれない。

 入電に対しては、督促するよりはまずは事情を聞くことから始めなければならない。債務者が電話をかけてきたときは、聞いて欲しいと言う気持ちがあるからである。返済の意思があることを分かってほしい、という気持ちを受け止めることが大切である。この仕事はカウンセリングだという理由がここにあるのである。

 返済できない事情があった、返せるものならとっくに返している、返済しなければならないことは承知している、多くの債務者のいつわざる気持ちである。

 この業務で大切なことは、長期に渡って不履行であった各債務者には、各自の事情なり理由があることを認識することだ。最初から不履行を責め立て、債務請求や返済の正当性を説き、執拗に返済を迫ることはない。

 様々な事情、勝手きわまる事情もあるにはある。それも含めて聞いてあげることが前提である。債務者は自分の都合によって平気で約束を破る。だから債務者となるのだ。当たり前のことである。

 債務者は返済しなければならない、長期滞納者という引け目、弱みを抱えているのだ。その関係において、嵩(かさ)にきて責め立てるのはどうだろう。心理的に追い込んで返済を強いるという考えもあるかもしれない。
こうしたやり方で終始していれば、担当者としていつかコンプライアンスを逸脱するような事態も招きかねない。

 そもそも精神的に辛いもの。担当者自身の人格破壊の恐れさえある。担当者自身、職業病となって己に降りかかるかもしれない。もう少し、担当者イコールカウンセラーとしての自覚が必要である。注意しなければならない。

 「もっと早く連絡あれば、とっくに返済していた。3年も経ってから督促なんて」と、「心当たりがない」ような言われ方をする債務者もいる。果たしてそうだろうか。低額の債務者にも、定期的な電話督促や請求書が送付されているはずだ。

 仕事の都合などで電話に出られなかった、来た請求書を無視した、こうした債務者はそのうち放っておけば督促がなくなると考えがち、そのうち本人も忘れてしまう。

 人間の脳には、忘れてしまいたいことや思い出したくないことを記憶の片隅に追いやってしまう、場合によっては自分の「都合の良い記憶や認識」に摩り替えてしまうことがある。そんなことを債務者とやり合っても意味がない。契約の確証と債務者の返済責務の自覚を冷静に促す以外に方法はないのだ。

「言った、言わない」の応酬は、時間だけかかり債務者自身の自尊心を傷つけ、落としどころまで時間がかかる。認めるべきところは認め(たとえ嘘であっても)、返済に向けての具体的な解答を引き出すほうが得策である。


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■督促状を受け取って連絡する債務者の心理とは
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 自ら電話をしてくる債務者の多くは、返済したいができない、返済しないと今後どのような立場になるのかなど自分の債務について関心を持っている人たちだ。また、返済に対して積極的に自分の意向を伝えたいと考えている人たちともいえる。

 中には勝手な自分の都合、あるいは生活環境を理由に返済できない事情を伝える債務者も多い。「返済したいができない」言い訳をしてくる。どこか第三者のような説明になってしまうことも多く見受けられる。

 事情は様々、それぞれの債務者の事情は様々だ。気を付けなければならないのは、こちらの勝手な思い込みや推測で折衝する、対応することである。

 担当している残債や件数を考えてみれば、相当な数字になる。一つ一つの案件にその場その場で引きずっているわけにはいかない。意識なり気持ちの切り替えが必要だ。たとえ忘れても以前の交渉記録を見れば、そのときのやりとりはすぐに思い出せるもの。スイッチの切り替えが重要だ。そうでなければ、督促業務はできない。

 債務者の多くは他人には言えない、隠したい事情を抱えている。それをあえて知る、聞き出すこともある。場合によっては、今後の返済を履行してもらう上でのカウンセリングの鍵になるからだ。そうした事情を知った上で、適切な対応が可能になることがある。

 債務は返済するもの、借金は返すもの、遅延は悪い、長期遅延者は悪質だ、といった対立関係のもとで対応すると、どうしても対応が相手に対して批判的になってしまう。

 すでに長期に渡って滞納し、これまで散々、請求され督促されそれでも不履行の債務者が相手でもある。今更同様の対応では本来の目的は達成されない。本来の目標は、「中長期に渡って履行されない不良債権の回収」にある。

 督促する債務者の言動にいちいち反応していては仕事にならないが、そこは慎重に対応しなければならない。場合によっては通常の常識や理屈が通らないこともある。どんな理由や言い訳でも時としては肯定的に受け入れ、話を聞くことが重要なのだ。話を聞いて欲しいのに、こちらの都合ば
かりを押し付けてくるから話しても無駄だ、という気持ちにさせてしまってはそこで終わりである。

 返済の意思がある場合は、本人の現状況をもとにカウンセリングを行う。
返済計画を立ててもらう場合、大事なことはあくまでも自分で決めさせることだ。

 人間は自分で決めたことに責任を持とうとする。自分で決めた約束を反故にすることに罪悪感すら感じるのだ。それゆえ守れなかった、守れない場合のためにそれ相当の理由を見つけようとする。言い訳を考えるのである。時としてそれは嘘でも相手を納得させれば良しとする身勝手な自己暗示となる。

 債務者から見れば、自分自身にとっての救済策は「とりあえず電話連絡を入れる」ことにある。一番話したくない相手と、つまり債権者の代理である担当者と話し合える、相談できる関係に置けば「気が楽になる」「前向きに考えられる」ということを自覚させることが、いい結果につながるのだ。

 督促の現場は人間模様、人生の縮図でもある。こうしたなかでのコミュニケーション技術で重要なことは説得術ではない。切り返し話法のプロでもない。「いかに聞き上手でいられるか」が原点である。

 

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