マーケティング
製造業の単品通販〜単品系通販のシステム(3)
POINT
『システムをどう導入するか』
『1,自営というのは』
『2,アウトソーシングというのは』
『3,自営かアウトソーシングか』
『4,これだけはやっておこう、見ておこう』
『5、アウトソーシング時の留意点の一つ』
『最後に 「通販業はシステム屋か」』
─────────────────
■システムをどう導入するか
─────────────────
前回の単品通販のお話を書き終わって気が付いた。システムの概要は分かったものの、それをどう導入するんだ、と言う疑問があると言うことだ。
単品通販にITが必須なのは当然としよう、では単品通販をこれから始める人はどのような考えで導入を図ったら良いのだろうか。
そこで今回は事前予告でデータベース・マーケティングとさせて頂いたが、急遽変更、システムの導入について触れさせて頂きたい。
─────────────────
■1,自営というのは
─────────────────
我々が通販業のシステム化を考えるときに幾つかのポイントがある。
・まず自営かアウトソーシングかということ
・次にアウトソーシングにするにしても何を自営するかと言うことだ。
少し解説しよう。
自営と言うのはITに拘わるツールを自社で導入してシステムを運営すること。
つまり自社の責任において導入し、すべての運営を自社で行うことだ。
一般的には通販業でも歴史があり、売り上げ規模の多い企業が実施している形態だ。
ただし、自営と言っても幾つか形態がある。つまり何を自営するかである。
大きく分ければハードウエア機器類、アプリケーション・ソフトウエア、システムの運用に分けられよう。まず
1)機器の自営
これは、自社で運用するか否かは別にしてハードウエア全体を自社で購入するケースだ。ハードウエアだけ導入してどうするのという疑問はあるだろうが、理由は幾つかあろう。例えば利益金の有効活用だ。
今期大変利益が上がったが、とりあえず資産として購入するケースだ。
ただし、この場合どこかで運用はしなければならないのでそのコストは別途と言うことになる。昔は結構この形態があったのだが最近は聞かなくなった。
2)アプリケーション・ソフトの自営
これはシステムで運用する委託のソフトウエアを自社開発すると言うことだ。ダイレクトマーケティングは知恵のビジネスだ、どこよりも優れたサービスをいかに提供するかが優劣を決める場合もある。これらのサービスはすべてシステムが拘わる。
例えば筆者は支払いにコンビニを使うことが多い。この理由は単純で事務所の隣にコンビニがあるからだ。しかし、もし支払い方式にコンビニがない場合には10分歩いたところにある郵便局に行かねばならない。何とも厄介だ。
そこでちょいと購入を考えてしまう。ことにオークションを多用する我々はそこを重視する。
ことに単品通販ではこのような細かいサービスが決め手になることが多いような気がする。顧客との対話ということはそれだけ負荷が多くなるわけで、ここで差別化が利かないと顧客ロストをしかねない。
「自社なりのサービスは自社なりのシステム」に通ずる。自社なりのシステムは他所(よそ)では販売していない。つまり、この部分だけは自営と言うことになろうか。
昔はすべてこのやり方だった。つまり、ダイレクトマーケティング専用のソリューションソフトウエアなど、どこにも売っていなかったのだ。だから各社いろいろ工夫して、ついでに言うと真似をしあい、盗みあいして、今の体系に作り上げたのだ。先人の工夫は素晴らしい。
現在では、これらのシステム機能を一括で購入することも出来る。これも素晴らしい。
ただしシステムを自営するということは自社で開発するということである。
しかし、ビジネス当初からシステム要員を抱えて開発と言うことは、今ではちょっと現実離れしている。基本の設計くらいまでは自社で行い、開発そのものはソフトウエア開発業者に委託という形になろう。
3)システムの運用
ハードを買った、システムも開発した、しかしこれだけではシステムは動いてくれない。運用しなければならないからだ。ハードを買ったら設置しておく場所も必要になろう、電気の供給も必要になろう、朝一番で電源を入れて操作を開始する必要もあろう、配送用に印書したラベルを何処かに持って行く必要もあろう、トラブルが起こればメーカーに交渉して直してもらわねばならないだろう、エンドユーザー(実際にシステムを使用する人)からの問い合わせにも答えなければならないだろう。このような事を一括して運用と言っている。
運用は細かいことの積み重ねだ。地味だがこれがなくてはシステムは動かない。
─────────────────
■2,アウトソーシングというのは
─────────────────
アウトソーシングというのは、システムに拘わる仕事ハードウエア、アプリケーション・ソフトウエア、運用などを外部の業者に委託することだ。
通常はこれら一括で外部委託することが多かろう。一括とはシステムの運営全体を外部委託するという形態だ。
1)ハードであれば、アウトソーシング業者の提供するマシン室に自営購入したハードウエアを設置させて貰ったり、あるいは業者の提供するハードウエアを他のユーザーと一緒に部分的に使わせて貰うことだ。
現在では無論後者の方が多い。ハードウエアの運用は意外に面倒で、そのためだけに要員を確保出来る企業は少なかろう。ただ、仕事としては存在するのでアウトソーシングは便利だ。
2)アプリケーションソ・フトウエアのアウトソーシングというのは、外部業者の開発したソフトウエアを使用させて貰うと言うことだ。
自社開発したソフトではないのでそれなりの制限があることは当然としても開発コストやメンテナンスコストが割安なのでメリットはある。
ただし、同じソフトを他の企業が使用することがあるのでサービスの特異性はなくなる。
最近はソフトウエアを販売するIT業者も増えてきた。インターネットの機能もPC、電話と拡がって来たので、サービスや競争の戦場が変わってきたと言えよう。これらの対応が出来るか否かが大きなポイントになろうか。
3)運用のアウトソーシングとは前述の通り、システムの運用や運用に拘わる労役の提供を有償で受けることである。
─────────────────
■3,自営かアウトソーシングか
─────────────────
システムを自営するか、アウトソーシングにするかは悩ましい話だ。
しかし、筆者の見る限りでは何かルールがありそうな気がする。それは企業の進展の度合いではないかと思っている。
一応企業の立ち上げ時期、成長の時期、爛熟の時として見てみよう。
当然これらの時期は売上金額の進展と同期するだろうし、また処理件数にも関係しよう。
1)例えば立ち上げ時期
年の売り上げを5000万円くらいとした場合、1件の平均単価が5000円としても1万件、年200日稼働として、日に50件のトランザクションだ。
50件の受注を処理するために自社で機器を購入し、要員を確保し運用するだろうか。
いや、昔はそれしかなかったのでどんなに小さくても自社導入したのだ。
今は、成長するか否か分からない世界で無用の投資はできまい。さすれば外部委託と言うことになろうか。ただしサービスは均一である事は否めないが。
2)企業が伸びている時期。
とにかくここまでは来た、しかしこれからはどうなるかは分からない。
反面これから伸びるとすればどこまで行くか分からない。ことにダイレクトマーケティング企業の成長は緩やかなカーブではなく階段状に進む。
つまり今年1億の売り上げの企業が次の年倍の2億なのは分かりやすいが、16億が32億に進展した場合、想像もつかない企業運営の困難さに突入するのだ。これに今のままの体勢で良いのだろうか。
3)企業の円熟期。
今まで売り上げ2000億円を越えたダイレクトマーケテイング企業は多くはない。まして単品通販というのは分野特定、売り上げではなく利益志向の経営であるので上限はある。当然競合も出て来るだろう、化粧品や健康食品は雨後の竹の子状態だ。
製造業の通販はまだ巨大企業は出て来ていないが萌芽は充分にある。
前述の通り、従来の通販企業は、アウトソーシングなどの仕組みが無かった時代の事業開発なのですべて自営だ。売り上げの進展に伴ってハードも買い換え、システムも作り替え、運用要員は増えるばかりで気の安まる間もなかった。しかし、システムは手の内にあるのでデータベース・マーケティングをやるにしても、新しい形態のビジネスやサービスをやるにしても比較的容易だった。
意味はことなるがアウトソーシングも考えやすい。トランザクションや取り扱い数量に伴う契約はあったとしても処理の保証はしてもらえる。新たにハードの入れ替えやCPUの入れ替えが起こらない限りまず問題は無かろう。
ただし、コストがどこまで進展するかは分からない。また時代の変化にどう対応するかの課題もあろう。
そこで、そろそろ自営の方向も考慮すべきなのかもしれない。当然人材の育成が追いついて行くか、が問題。
そんな訳で、事業開始時期、事業の伸展時期はアウトソーシング、爛熟期になって自営もしくはアウトソーシング兼、と言うパターンか。
────────────────────
■4,これだけはやっておこう、見ておこう
────────────────────
新規にビジネスを開始するにしろ、新しい機能を追加するにしろシステム化に当たってすべき事は沢山ある。その中でも、一つだけしておくべき事と言われたら、「システムで何をやりたいかを明確にしておく」ことだ。
IT用語では「システム化要件」と言うが、やりたいことを明らかにしておくことが重要だ。
例えば、支払いの仕組みでは何を採用するのか、銀行振り込みなのか、郵便局なのか、コンビニなのかネットなのか、代引きなのか等々。
システムというのは3つの基本的ファンクションがある。つまりノーマル・ルーティン、リカバリー処理、リスタート処理だ。
ノーマルルーティンとは正しい処理を正しくすることだ。リカバリー処理とはイレギュラーの状態を正しい処理に回復させる処理、そしてリスタート処理とは再びノーマル処理を開始させる事だ。
ITの処理と言うのはいつも正しいデータが入ってくるわけではない。例えば入力された支払いデータが請求額と一致した時の処理と、異なった時の処理は自ずから変わるであろうし、その誤ったデータを正しいデータに修復する(要求)処理も必要であろうし、次に正しい金額が入ってきた処理も必要であろう。
機能として何をやりたいのか、その時それぞれの処理はどうするのかはぜひ明確にしておいて頂きたい。
システム開発をアウトソーシングする場合は、アウトソーシング先に専門要員がいるかいないかで大きく様変わりする。こちらの要求を正しく理解出来るシステム要員がいたら大いに助かるだろう。
こんな体験をした事がある。某中堅企業が事業拡大により新通販業のシステムを構築するにあたり、複数社コンペさせた。受託したIT企業が何を思ったか小売業のエンジニアではなく製造業のエンジニアを派遣してしまった。小売業などは何も知らない、ましてダイレクトマーケティングの認識なんか何もないSE集団が「ヨッコイショッ」と現状分析から始まり、「エッチラオッチラ」カットオーバーまでなんと2年半かかってしまった。この2年半の間に業界はどんどん変化し続けてしまった。
依頼側の要求事項の整理と、それを理解する開発側のエンジニア、そしてたたき台としてのシステムがあればそんなことはなかったのに。
────────────────────
■5、アウトソーシング時の留意点の一つ
────────────────────
どうも事業新規開発期はアウトソーシングに分があるようだが、これはいたしかたない。システム開発から運用に及ばず事業全体を一括して支援するアウトソーシング業者というものはそれなりにノウハウも積み、実績もある。部分的には通販業者も叶わない知識を保有しているものだ。
しかし彼らの気が付かない重要なことが一つある。それは「彼らは受託業者の眼で見、我々は委託側の眼で見る」と言うことだ。
それには必ず仕事の実施現場を見に行くこと。現場を見ないで仕事を委託してはいけない。
例えば留意点の一つは「顧客情報」の管理の仕方。顧客情報はシステム内部に保管されているのではなく、場合によって紙で管理されるものもある。システム側はキッチリとロックが効いているだろうし、画面表示も留意されているであろう。
問題は紙の管理のされ方だ。チャンと鍵付きのキャビネットに保管されているか、鍵の管理は出来ているか、入出庫記録が取られているか、管理者が決められているか、定期的に監査されているか、適正な場所で閲覧されているか、コピーは取りにくくなっているかなどなど。
まして机の上に無造作においてあるなど言語道断。と言いながらも比較的多いのはこのケース。コールセンターの会話メモなど無造作に束ねて表紙もつけずにキャビネットの上に積まれているなど良く見かける。こんなアウトソーシング先は要注意だ。
────────────────────
■6,どのくらいのコストが掛かるものなの
────────────────────
今、残念ながら手元に正確なデータはない。業界全体の調査では日本通信販売協会の年次アンケート調査があるだけだろう。
そこで筆者が記憶している数年前、もしくは10年以上前のデータになるが
・売り上げの少ないときは高い対売上構成費で
・売り上げが多くなれば低い対売上構成費で
と言うことになろうか。
例えば売り上げ10億くらいまでは対売り上げ4%位、100億以上で2%位と記憶している。
ただしこれはシステムに拘わる経費と言うことで、開発なのか運用なのか、コールセンターの経費を含むのかなどの定義はなかったと思う。
詳しくは通販協会で調べて頂きたい。
────────────────────
■最後に 「通販業はシステム屋か」
────────────────────
いつも企業のシステムに関して問題になるテーマだが、ダイレクトマーケティング企業は、通販業かシステム屋かと言う問題が必ず発生する。
当然の事ながらダイレクトマーケターは小売業だ。商品を企画し、委託製造し、媒体を作り、販売する、これが通販業の中核の仕事だ。それ以外はこの中核業務をサポートする脇役と考えて良い。
しかしシステム、ことにシステム要員と言うのはどうしても特種な世界に落ちこんでしまう嫌いがある、ITと言う"ど壺"に。数少ない例だが、事業のためのシステムというよりも、システムのための事業と言う本末転倒現象が起こりかねない。たしかに通販企業にとって顧客データベースやサービスを取り扱うシステムは第2の資産だ。だからといって絶対ではない。
システムの優位性や困難性を経営に及ぼしてはならない。まして経営が理解出来ない言語で自己主張をしてはいけない。
やはり通販業は小売業なのだ。ここを忘れてはいけない。
次回はデータベース・マーケティングの話題で。
新着記事
- 2012.01.30
- 【第36回】トラブル対応でなくした1000万円
- 2012.01.30
- 【第37回】日本版格差社会がますます深刻化してきた 年末の新聞、情報誌から読み解く日本の経済環境
- 2012.01.30
- 「ソーシャル時代における BtoC 型 Eコマース成功のポイント」他
- 2012.01.16
- 【第12回】市場は世界。打つ手は無限。ECにこそ必要なグローバル視点







コメントする