マーケティング

ネット時代に求められるお客さまとの関係づくりナビゲータ写真
記事一覧へ

すでに通信販売を展開しておられる企業はもちろん、これから通販を始めようという企業の皆さまのビジネスのヒントになると思われる切り口を取り上げ、成功企業の事例とともにお届けします。

株式会社アイ・エム・プレス    代表取締役 西村道子

【第5回】通販にとっての顧客サービス

2010年01月12日|トラックバック(0)

POINT

『通販と顧客サービス』
『忘れられがちな受注後のサービス』
『豊かな食生活をより多くのお客様に』
『お客さまに幸せの瞬間と空間を提供する』
『お届けの先にある顧客の生活を見据える』

─────────────────
■通販と顧客サービス
─────────────────

通販を展開する企業の中には、"商品をお客さまの自宅や職場までお届けする"という意味で、通販そのものを顧客サービスと捉えている企業もあれば、一方では"商品を直接、見て、触って、確認できない"という意味で、通販そのものが顧客に不便をかけると捉えている企業もあるようです。それぞれの言説の背景には、各社の立ち位置や商品特性の違いがあるものの、これはサービスがいかに漠としたものであるかを示しているといえるでしょう。

2004年に"ダイレクトマーケティングの父"の異名を持つレスター・ワンダーマン氏をインタビューしたときのこと、氏は「米国では今、人々はスーパーに出かけることなく、家に居ながらにしてネットで日常の買い物を済ませるようになってきた」と語っています。それから6年を経た今日、氏が語った世界は日本でも"ネットスーパー"として具現化され、多くの生活者が利用するに至っています。これはGMSやスーパーマーケットなどの店舗小売業にとっては、通販への参入であると同時に、顧客サービスのひとつということもできるでしょう。

一方、通販そのものが顧客に不便をかけるという通販企業では、カタログやネットによる通販にとどまらず、店舗展開に乗り出すと同時に、店舗を通販利用客のためのサービス拠点としても活用しています。この結果、新商品に興味を持った通販利用客は、まずは店舗に赴き、店頭で商品を直接、見て、触って、確かめた上で、気に入れば後日、ネットや電話で注文するといった購買スタイルを取るようになったとのこと。つまり、この企業の通販部門においては、通販ではなく店舗が顧客サービスのひとつとして位置付けられているといえるでしょう。


─────────────────
■忘れられがちな受注後のサービス
─────────────────

こうして考えてみると、「通販にとっての顧客サービス」は、そもそも近所の店では手に入らない商品をお届けすることかもしれないし、マルチチャネルにより購入方法の選択肢を提供することかもしれないし、顧客にとって魅力的なオファーかもしれないし、受注後のサービスかもしれないし、まさに通販にかかわるすべてのプロセスのように思えてきます。そこで今回は、中でもともすれば忘れられがちな受注後のサービスに焦点を絞って、先行企業の事例とともに、そのあるべき姿について考えてみたいと思います。

ご存じの通り通販においては、店舗販売と異なり、受注時点と商品配送や代金決済の時点がイコールではありません。したがって、受注後のサービスというと、配送のリードタイムや、送料負担の多寡、あるいは代金支払方法の選択肢、さらには返品・交換対応などのフルフィルメント・サービスがイメージされるでしょう。これらの課題については、物流や決済にかかわる技術革新や新たなソリューションの登場により、一昔前と比べると格段に進化しているし、返品・交換対応についても、サービス競争が激化する中で、顧客が安心して注文できる環境が整ってきました。

しかし、受注後のサービスは、このような顧客にとっての利便性を高めることばかりではありません。例えば、商品のお届けをどのように演出するか、また、その商品のある生活をどのように楽しんでいただくかは、顧客のロイヤルティを醸成するうえで、大きな意味を持っていると言えます。従来、こうした受注後のサービスは、ともすればバックエンドの業務として軽視されがちでした。しかし最近では、これにこだわる企業が、少しずつ増えているように感じられます。以下、弊社が最近、取材させていただいた企業の中から、2社の事例をご紹介しましょう。


──────────────────────
■豊かな食生活をより多くのお客様に
──────────────────────

<食材宅配会社 オイシックス(株)のケース>

まずは、インターネットと牛乳宅配店ルートを通じた食材宅配事業を展開するオイシックス(株)の事例です。同社は「豊かな食生活をより多くのお客様に」を企業理念に、2000年6月に設立。決められたセットの定期購入、配送日・時間の指定ができない、入会金・年会費が必要、といったそれまでの食材宅配事業のプロセスを顧客の視点で再構築することで、累計して約35万人の顧客を獲得、2009年3月期には62億円の売り上げを達成するに至っています。

同社では、ただ単に安心な食材を宅配するだけではなく、お届けした食材を使った料理を食べて笑顔が生まれるまでを見据えた顧客サービスの設計に注力しています。一例を挙げれば、新規顧客向けの「お試しセット」のお届けに当たっては、中箱のフタにそれぞれの食材の保存方法を記載しているほか、社長直筆の手紙と商品紹介のパンフレット、さらには届けられた野菜の生育過程をモチーフにした「旬の野菜のポストカード」を同梱。顧客は到着した食材が食卓に上るまで最適な方法で保存して鮮度を保つと同時に、同梱のポストカードを見て、「アスパラガスって、こんな風に生えるんだ」などと商品への理解を深めることもできます。

また同社では、より美味しく食べていただけるように、配達日に「届け出日メール」を配信。これには、生産者からのメッセージや、お薦めの調理方法などを盛り込み、届けられた食材がお客さまの口に入るまで、ひいては家族の食卓での話題づくりに至るまで、エンド・ツー・エンドの顧客サービスを実践しているといえるでしょう。
(月刊『アイ・エム・プレス』2009年6月号より http://www.im-press.jp/magazine/157.html


─────────────────────────────
■お客さまに幸せの瞬間と空間を提供する
─────────────────────────────

<「アンジェ web shop」を運営 セレクチュアー(株)のケース>

もう1社、受注後の顧客サービスに注力している通販会社の例として、楽天市場インテリア部門において9年連続で「Shop of the year」の第1位を確保している、セレクチュアー(株)が主宰する「アンジェweb shop」の取り組みをご紹介しましょう。現在、同社では、「楽天市場」をはじめとするショッピング・モールを中心に、インテリア雑貨を中心としたネット通販を展開。2008年度の売上高は、約17億8,000万円に達しています。

同社では、"お客さまに幸せの瞬間と空間を提供する"ことをモットーに、これまでにネットショップで味わったことのないような心地よさをいかに表現できるかに取り組んでいます。そこでのポイントは人間味の演出にあるというのが同社の考え方。コールセンターではセルフ・サービスを廃して、ライブ・オペレーションにこだわると同時に、お届け時のeメール配信においても、既成のテンプレートに頼らずに、日ごろ感じていることを一言、コメントするように心がけているそうです。

配送面では、例えば、段ボール箱に張ってあるガムテープの端を折って、爪を伸ばしている女性でも剥がしやすいようにしておく、ブランドの世界観を感じていただくために、フランス語の「アンジェ新聞」を同梱するなど、ターゲットである30代の女性を意識したきめ細かいサービスを実践。梱包に入れる緩衝材も、簡単に捨てられるタイプのものを使用するなど、単に届けるだけではなく、"届けて、使って、笑顔になっていただく"までを使命に、お客さまの立場に立った取り組みを推進しています。
(月刊『アイ・エム・プレス』2009年12月号より http://www.im-press.jp/magazine/163.html


────────────────────
■お届けの先にある顧客の生活を見据える
────────────────────

今回、ご紹介した2社の取り組みはいずれも、"商品を届けて終わり"ではなく、その先にある顧客の生活を見据えているのが特徴です。通販会社においてはこれまで、受注に先駆けてのプロモーション的なサービス、あるいは申し込み、配送、代金回収、返品・交換といった買い物における利便性の向上にフォーカスしがちでした。しかし、これらの企業に見られるように、注文商品が顧客のもとに届けられ、実際に梱包を開ける、さらには商品を使う時点へと視野を広げると、そこにはさまざまな工夫の余地が残されています。

冒頭で紹介したインタビューの時に、レスター・ワンダーマン氏はダイレクトマーケティングの将来について、「すべての商品がサービスに姿を変え、ダイレクトマーケティングでやりとりされるようになる」と語っておられます。そうした時代に勝ち残るためには、"商品をお客さまの自宅や職場までお届けする"だけではなく、その先にある顧客の生活シーンに思いをはせると同時に、これに基づき商品の提供プロセスを再構築することが求められているといえるでしょう。

不況下において、既存顧客の維持が至上命令となっている昨今、顧客の購買プロセスにおけるこの"最後の聖域"をいかに演出するかは、顧客のロイヤルティを向上し、リピートオーダーを促進するうえで、大きなインパクトを持っているはずです。通販を展開している企業にあっては、受注前のサービスのみならず、受注後のサービスを、今一度、顧客の視点で見直してみてはいかがでしょうか。

トラックバック(0)

・このブログ記事を参照しているブログ一覧:

【第5回】通販にとっての顧客サービス


・このブログ記事に対するトラックバックURL:

http://www.scroll360.jp/mt/mt-tb.cgi/1378